外国人雇用のための基礎知識

目次

在留資格の2つの基本ルール

在留資格の最も基本的な2つのルールを確認しておきましょう。
外国人はこれらのルールに違反すると日本に滞在で雇用主のほうでもこれを遵守していかなければなりません。

活動範囲を守る

どの在留資格にも、その在留資格でできる活動が定められています。
外国人は、その活動の範囲を守らなければならない、というのが一つ目の最重要ルールです。
例えば、留学生が学校に通わずに仕事をしたり、就労を目的とする在留資格を持つ人が、その在留資格で認められていない仕事に従事したりすると、このルールに反することになり、入管法違反(不法就労)とみなされてしまいます。
また、退職や退学、離婚などの事情変更があり、在留資格の活動をせずに滞在を続けていると、在留資格の取消対象となってしまいます。

活動範囲に変更がある場合の対応

滞在中に、就職や転職、結婚などで他の在留資格の活動をすることになった場合は、在留資格の変更(いわゆる「ビザの変更」)をして滞在を続けることができます。例えば、次のような場合です。

1) 留学生が卒業後に介護福祉士として就職する場合

⇒ 「留学」から「介護」に変更

2 ) 教師として働く外国人が退職し日本人と結婚した場合

⇒ 「教育」から「日本人の配偶者等」に変更

3) 技術者として働く外国人が、起業して会社経営をする場合 ⇒「技術・人文知識・国際業務」から「経営・管理」に変更

滞在期間を守る

外国人が在留資格を取得するとき、その在留資格で滞在できる期間(在留期間)が指定されます。簡単にいうと、ビザの期限内で滞在できる、ということです。ビザの期限を1日でも超えると、いわゆるオーバーステイ(不法滞在)となってしまいます。外国人や雇用主としては、安定的に就労/雇用できる、長期のビザを希望したいところですが、どの程度の在留期間が認められるかは、個々の外国人に必要な期間や滞在の安定性などを考慮して決定されます。
また、ビザの期限を超えて滞在を続けたい場合は、在留期間の更新(いわゆる「ビザの更新」)をしなければなりません。安定した滞在を続けていると、ビザの更新を機に、より長期の在留期間を取得できることがあります。なお、在留資格によって、設定されている在留期間は次のように異なります。

在留期間の例
  • 「技術・人文知識・国際業務」:5年、3年、1年または3月
  • 「日本人の配偶者等」:5年、3年、1年または6月
  • 「永住者」:無期限

雇用できる外国人の見分け方

在留資格は、就労が認められているものと、認められていないものに分けられます。また、就労が認められていても、就労の範囲が制限されている在留資格もあります。下の表は就労制限の違いで在留資格を4つに分けたものです。これを知っていると国内に滞在する外国人を雇用する場合、合法的に雇用できるかどうか簡単に判断することができます。

在留資格(29種類)

就労制限なし

身分系の在留資格で在留資格には就労制限がないため、日本人と同様に就労することができます。

「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」

就労不可

週28時間以内でのアルバイトに限って「資格外活動許可」を得ることで従事可能です。

「留学」「家族滞在」「研修」「文化活動」「短期滞在」

就労ビザ(就労制限あり)

在留資格の活動範囲内に限り就労が認められています。

「外交」「公用」「教授」「芸術」「宗教」「報道」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「介護」「高度専門職」「企業内勤務」「興行」「技能」「技術・人文知識・国際業務」「技能実習」「特定技能」
※「外交」「公用」は、活動内容の性質上、就労ビザと区別されることがあります。

就労可/不可

個々の活動内容や就労の可否については、パスポートに添付されている「指定書」に記載されています。

「特定活動」

在留資格を持たない外国人

上記のいずれの在留資格も持たずに滞在している外国人は、不法滞在者です。
具体的には、オーバーステイの外国人や偽造パスポート等で不正に入国した外国人などがこれにあたります。実際、このような不法滞在者は数多くおり、2019年時点で約7万9,000人にものぼります(法務省データ)。不法滞在者は退去強制(いわゆる強制送還)の対象となり、通常は入管に収容されることになります。しかし、病気治療等の事情により収容されず、仮放免されている外国人も多くいます。
これらの外国人が求人に応募してきた場合、彼らは就労を認められていませんので注意が必要です。また、雇用契約を結んでも、就労ビザを取得することはできません。

在留カードの確認

在留資格を持って合法的に滞在している外国人には、在留資格や在留期間の満了日、アルバイトの許可(資格外活動許可)などの事項が記載された在留カードが交付されています。
外国人を採用する際には必ずこれを確認するようにしましょう。

「難民ビザ」の外国人

「“難民ビザ”を持っている」という外国人が現在多く滞在しています。このビザでは就労が認められている場合があるため、実際にこのような外国人を雇用する企業も少なくありません。

では、「難民ビザ」の外国人とは一体何でしょうか。中には実際に、母国で迫害を受けて逃れてきた難民もいます。しかし多くの場合、難民と認定されるための申請(難民申請)をし、その審査結果を待っている外国人です。この場合、「特定活動」の在留資格で滞在しますが、外国人はこれを「難民ビザ」と呼んでいます。

日本では、難民申請をした場合その結果を受け取るまでの間、就労が認められることがあります。また、この審査には、数カ月から数年かかることもあるので、長期間の就労が可能になることもあります。このため、実際には難民ではないにもかかわらず、就労を目的として難民申請をする外国人が大変多くいることが問題になっています。失踪した技能実習生や留学生が申請するケース、あるいは、短期滞在ビザで来日して申請をするケースなどがあります。

実際、2018年の日本の難民認定率は0.4%という大変低い数字です。これには、上記のような制度の誤用・濫用が大きく関係しています。このような中、2018年以降は、制度の濫用を防ぐために、難民申請の手続きが見直され、従来よりも早く審査結果を出すなどの厳正な対応がされるようになっています。

「難民ビザ」の外国人を雇用することは違法ではありませんが、長期間の雇用はできず、突然帰国してしまう可能性があることを知っておく必要があります。

不法就労させた雇用主の罰則

不法就労があった場合は、外国人だけでなく、外国人に不法就労をさせた事業主に対しても罰則が科されることがあるので注意が必要です。

不法就労の3つのケース

不法滞在者や被退去強制者が働くケース

  • 密入国した人や在留期限の切れた人が働く
  • 強制送還が決まっているが、仮放免されている人が働く

入管から働く許可を受けていないのに働くケース

  • 観光等を目的として「短期滞在」で入国した人が働く
  • 留学生や難民認定申請中の人が許可を受けずに働く

入管から認められた範囲を超えて働くケース

  • 通訳者が機械工場で単純労働者として働く
  • 留学生が許可された時間数を超えて働く

事業主の罰則「不法就労助長罪」

不法就労させたり、不法就労をあっせんした場合は、不法就労助長罪が適用され、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらが併科されることがあります。

なお、外国人を雇用しようとする際に、外国人が不法就労者であることを知らなかったとしても、在留カードを確認していない等の過失がある場合には、処罰を免れませんので注意が必要です。

不法就労助長罪での検挙

深刻な人手不足を背景に、飲食店や工場などでアルバイトの留学生に週28時間の制限を超えて就労させたり、在留資格のない外国人を働かせたりするなどして、不法就労助長罪で検挙される数は毎年370件~400件に上っています。

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